墓参り。結局会わずじまいだった人の。彼は心筋梗塞で急逝した。愛人宅で。心の中で問いかける。僕が人の道ならぬ恋に身を投じた時の事を思い出しながら。


「因果応報、ですね……。僕もまた?」


彼女はお父さんの死んだ場所を知っている。また、僕の犯した取り返しのつかない過ちについても。そう、彼女は大好きだったお父さんと、「この人とならうまくやっていける」と信じた僕に裏切られている。僕の前に付き合っていた彼とは不倫の関係だったという。不倫の関係だったと知るのはずっと後になってからだったらしいが。裏切られ人生。極めつけと言ってもいい。断言しても。


月1万のお小遣いに我慢ならなくなり、大喧嘩したことがある。財産の半分は僕のものだと、それを使用する権利はどこへいったのだと。彼女は一晩泣き、翌朝、「好きに使ったら?」という書き置きとともに通帳が全て置かれていた。


人として生きる価値なし。でも、子供のために傀儡として存在し続けなければならない空しさ。もうあなたを愛せないと言われても傍にいる違和感。


隣の墓が新しくなっていた。先祖代々の法名等が刻まれていた。弘化。そんな元号は知らない。